2014年5月アーカイブ

相続放棄を行使するケースの大半は、被相続人が遺した遺産が、マイナスであるケースです。考えてみれば当然のことで、わざわざ自らが借金を背負うという人はいないでしょう。
また中には、プラスの遺産が残っているにもかかわらず、これを行使する人もいるようです。その理由は、相続問題で揉めたくないから、相続を手にする権利は他の人にこそあると考えているケースです。
私にも経験があるのですが、両親の世話を長男の家族に全て任せており、私の家族は、遠い地で暮らしていました。ほとんどと言っていいほど何もしてこなかったのですから、今更相続権を主張するのは、おかしいと思ったのです。
そこで父が亡くなった際、私は、その意思を兄に告げました。兄夫婦こそが受け取るのにふさわしい、素直にそう思えていたので、その後に家庭裁判所で相続放棄の申述書と戸籍等の必要書類を提出し、その結果、相続放棄申述受理証明書という書類をいただくことができましたので、その書類を兄に手渡しました。
もしあの時相続放棄をしていなかったら、もしかしたら相続問題で揉めていたかもしれません。それを回避でき、兄夫婦との付き合いも良好な関係を継続できているのですから、あの時の決断は、決して間違いではなかったと思っています。
ただ、その後に司法書士と話す機会があり、偶然わかったことなのですが、私のようなケースでは、相続放棄の手続きではなく、遺産分割協議を行い、兄が単独ですべての遺産を相続するという内容の遺産分割協議書を作成すればよかったのだそうです。債務があった場合には、遺産分割協議の結果を債権者に主張することができないために、家庭裁判所で相続放棄の手続きをとる必要があるのですが、私たちのように負債がないケースにおいては、わざわざ相続放棄をする必要性は低いとのことでした。
しかし、私の場合、相続放棄の手続きはそれほど大変ではありませんでした。大変なのは、相続が発覚してから3ヶ月以上経過してから相続放棄をするようなケースです。この場合には、原則として相続放棄は難しいということになります。
ただし、相続人が、その存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろう債務について、当初は知らなかったが後に知ったという場合などには、 3ヶ月の熟慮期間の起算点を繰り下げて、その債務の存在を知ったときから3ヶ月とすることができることがあります。放棄が受理されるかどうかは裁判官の判断となり、このようなケースで必ず放棄が受理されるとは限りませんが、一般的には受理される(相続放棄が認められる)ことが多いようです。

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